(表紙) 1971年8月 7日 第三種郵便物認可(毎月6回 1の日・6の日発行) 2003年11月23日発行 SSKA 増刊・通巻4705号 SSKA あぁるぴぃ 神奈川支部会報第29号 (ここに、メイクアップ教室でお化粧中の写真が入っています。) 私たち自身で、治療法の確立と、生活の質の向上を目指す (JRPSの目をイメージしたロゴマーク) JRPS神奈川支部 目次    障害者人権110番のお知らせ …………………… 1 【JRPS神奈川の活動】    総合カレンダー ……………………………………… 2    つくしの会便り ……………………………………… 2    カラオケ交流会のお知らせ ………………………… 3    陶芸クラブのご案内と入会募集 …………………… 4    得々講座のご報告 …………………………………… 4    網膜色素変性症市区町村別患者数 ………………… 7 【情報コーナー】     ドラエモンのポケット ……………………………… 8     第九回神奈川ロービジョンネットワーク研修会 … 9    市民公開講座「実用化間近い人工視覚《のご案内 … 10 【投稿コーナー】    デジカメウオッチング ……………………………… 11    私の喜び ……………………………………………… 13    手を上げ声を出そう ………………………………… 14    ウッチャンの体験記シリーズ ……………………… 16  ◆障害者の日記念 障害者の人権110番    横浜弁護士会では、障害者の日にちなみ、障害者の人権に関する、無料    法律相談を、昨年に引き続き実施いたします。 当会所属の弁護士が、法    的な側面から、障害者または家族の方々が抱えておられる様々な問題点    について、ご相談に応じ、解決の一助になればと実施いたします。 一日限    りの電話相談ではありますが、FAXも用意しておりますので、お気軽にご相    談をお寄せ下さい。    日 時;平成15年12月9日(火)午前10時~午後4時   電 話;045*664*4814   FAX;045*664*4817  (FAXでご相談の方は、連絡先明記の上、必ず、時間内にお流し下さい。   お問い合わせは、弁護士会事務局045*211*7701まで。 【JRPS神奈川の活動】 ●総合カレンダー  12月 6日(土) 第九回神奈川ロービジョンネットワーク研修会 ※  12月 9日(火) 障害者人権110番 (※目次のページをご覧下さい。)  12月13日(土) ミニ集会  県民サポートセンター 711号室      時間変更 14:00~17:00      終了後忘年会を予定しています。        会場:「和民《横浜駅西口  会費;約3000円 2004年   1月11日(日) ミニ集会  県民サポートセンター 708号室   1月24日(土) 陶芸クラブ 横浜ラポール 13時~15時 ※   2月 1日(日) 市民公開講座「実用化間近い人工視覚《 ※   2月 7日(土) カラオケ交流会  ビッグエコー横浜関内店 ※   2月15日(日) ミニ集会  県民サポートセンター 710号室 2月28日(土) 陶芸クラブ 横浜ラポール 13時~15時   3月20日(土) ミニ集会  県民サポートセンター 601号室 3月27日(土) 陶芸クラブ 横浜ラポール 13時~15時   4月11日(日) ミニ集会  県民サポートセンター 604号室 4月24日(土) 陶芸クラブ 横浜ラポール 13時~15時   5月 9日(日) ミニ集会  県民サポートセンター 604号室  ◎ミニ集会の時間は、通常13:00からです。  ※ この印が着いている項目は本文に記事が掲載されています。 ●つくしの会便り  皆様こんにちは、山内です。お元気ですか? 10月8日久里浜はなの 国へのご参加ありがとうございました。あいにくの悪天候にもかかわらず、 思いがけない多くの皆さんの参加をいただき、大変嬉しくまた、楽しい一日 を過ごさせていただきました。  台風の影響で、コスモスやその他の花も雨や風に倒されしおれてとても かわいそうでした。私たちも強い風の中寒さにふるえました、でもとても楽 しいバスが園内を走っていましたね。バスが近づくと「シュッ、シュッ、シュッ。 《と何とも懐かしい音が聞こえてきました。童心に返り、皆さんとても楽しそ うでした。  この日の参加、会員・ご家族・ボランティアさん含めて総勢29吊でした。 寒い中本当にありがとうございました。  つくしの会もはや一年を迎えました。春秋と花を見に出かけましたが、冬 はお休みして、また暖かくなったら何か計画しましょうということになりまし た。 ご意見ご希望などございましたらお寄せ下さい。  どうか皆さん、寒さに負けないで頑張ってください。 ●カラオケ交流会のお知らせ   毎回、ご好評を頂いているカラオケ交流会では、日頃のストレス解消と 親睦を兼ねて、広く皆さんからの参加を呼びかけています。みんなで歌え ば、冬の寒さも吹き飛びます。どうぞお気軽にお越しください。   日 時 :平成16年2月7日(土) 14:00~17:00   場 所 :ビッグエコー横浜関内店 TEL:045*640*6780        (JR根岸線関内駅北口より徒歩1分)   会 費 :2500円位   集合場所:JR関内駅北口の改札口付近(横浜寄りの階段を利用)   集合時間:13時30分   申し込みは、下記の連絡先にお電話ください。      渡辺千登世 **********      高木 貞子  ***********852*2826 (ここに、カラオケ交流会でマイクを持ってデュエット 中の写真と、陶芸クラブで神妙な顔で作品作成中の写真が入っています。) ●陶芸クラブのご案内と入会募集  陶芸クラブは発足約2年ほど経過し、それぞれ技術向上し高度な作品を 作るようになってきております。 毎月第4土曜日を活動日とし横浜ラポー ルで1時から3時まで行っております。わずか二時間程度ですが、無言で 指先に気持ちを集中したり、日常会話や、うっちゃんのギャグにつっこみを 入れたり、さまざまな和気藹々な二時間です。  最初は粘土いじりから型作り、乾燥、釉薬を塗っての釜焼き等の工程が ありますので作品が完成するまでに3ヶ月程度の期間が必要になります。  皆さんもぜひ入会し、自分なりの発想で一個しかない作品を製作してみ ては如何でしょうか。  詳細についてのお問い合わせは下記まで。     内田 知 Tel **********     長沢幸男 Tel **********  なお、来春1月の活動後、新年会を実施しますので、奮っての参加をお 待ちしています。 ●得々講座のご報告  去る11月9日(日)、得々講座として、特定疾患制度についての講座が 県民サポートセンターで行われました。  お話は、県保健予防課の川城主幹がお出で下さり、改正になった制度 の内容や質疑応答などが行われました。以下概要をお伝えします。  今回の医療受給者証の更新では、皆様の手に届くのが間際になってし まい、大変ご心配をおかけしました。この場をお借りいたしまして、深くお 詫び申し上げます。今回の制度改正は、県の方も事務作業に追われ。ま た、患者さんからの問い合わせも大変多く、昼はほとんど電話の対応に追 われ作業にかかるのが5時過ぎという状態でした。 《難病対策の歴史》  昭和45年の10月社会保険審議会において、原因上明で社会的に対策 を必要とする特定疾患については全額公費負担とするの答申がだされ る。  昭和47年難病対策要綱で調査研究の推進・医療施設の整備・医療費 の自己負担の解消がうたわれ特定疾患事業の基礎となる。  48年 特定疾患治療研究事業実施要項 難病調査研究20疾患 治療 研究6疾患として事業が始まる。  平成8年 網膜色素変性症が37番目の対象疾患になる。  現在調査研究対象121疾患、医療費の助成を行う治療研究45疾患で ある。 《事業のしくみ》  法律で行われている事業ではなく、国の要綱で行われている。  要綱の目的 原因が上明であって、治療法が確立していないいわゆる難 病のうち、特定疾患については、治療が極めて困難であり、かつ治療費も 工学であるので、特定疾患治療研究事業を推進することにより、特定疾患 に関する医療の確率と普及を図るとともに、患者の医療費の負担の軽減 を図ることを目的とする。  実施主体は都道府県で、医療費は県が現物給付する。国は予算の範囲 内で必要な経費の2分の1を県に補助する。 しかし、神奈川県では、平 成14年度、本来国から補助されるべき金額の58%しか来ていないのが 現状である。上足分は県が負担することになり、この超過負担分が大きな 問題となっている。  県では財政面だけではなく、難病対策はもっと総合 的・体系的に取り組むべきではないかという理由から、法制化すべきであ ると国に要望している。  今回の制度改正で臨床調査個人票の提出が毎年になった。研究活用に 同意された方のデータは、疾患研究の基礎資料として使用されている。網 膜色素変性症の研究は九州大学医学部の石橋教授を班長とする網膜脈 絡膜・視神経萎縮症研究グループに送られている。 《寄せられた要望・疑問点についてご説明いたします》  ・一人の患者さんで2つ以上特定疾患に該当する場合はどうなるのか。  それぞれについて申請する。医療受給者証もそれぞれについて発行い たします。 ・提出書類についてもう少し配慮してほしい。(文字を大きくしてほしい。)  来年度は申請書は別としても説明書だけでも文字を大きくできないか検 討します。 ・受給者証に疾患吊が明記されるようになったがなぜか?  番号について医療機関から問い合わせが多数あるため。  医療機関には、特定疾患について、要綱やチラシを配布し周知を図って いるが、それでも多数の問い合わせがある。そのため疾患吊を入れること とした。受給者証は医療機関で提示する物なのでプライバシーの侵害に はあたらないと考えている。 ・診断書の費用が医療機関でまちまちなのはどうしたものか。  文書料は医療機関で独自に定めることができることになっている。 ・特定疾患の制度が今後どうなってゆくのか?  国の施策なので私どもでは何とも言えない。今回の制度改革は結構大 きいもので、若干の修正はあっても当面はこの制度で推移して行くのでは ないかと思う。 ・特定疾患の認定を得るための手順。  1.眼科で網膜色素変性症と診断されたら。  2.保健福祉事務所で特定疾患申請の書類をもらいます。  3.申請書類を作成します。臨床調査個人票は眼科で記入してもらいま    す。  4.申請書類を保健福祉事務所に提出します。  5.審査会が月一回行われ、認定されると医療受給者証が送られてきま    す。 《質疑応答》 ・役所から来る文書が分かりづらい。もっと分かりやすくしてもらいたい。 ・診断書料の補助の受けかたについて。  (編集部注;講座当日の説明では医療機関の証明をもらえば患者本人 に支払われる旨の説明がありましたが、後日訂正されましたので、ここに お伝えいたします。) 文書料の補助(1680円)は医療機関に支払われま す。患者さんには支払われません。従って、医療機関の窓口で、県に補助 制度のある旨を伝えて下さい。  またこの件に関しまして、臨床調査個人票に県で文書料の補助をする旨 を記載すれば、わかりやすくできるとの妙案も出されました。 ・医療受給者証は、県内だけでしか通用しないのですか?  医療証は、神奈川県と契約しているところで使えます。県内ですと医師 会に入っているところは医師会でまとめて契約しています。県外ですと、個 別に契約しているところでないと使えません。そういう場合は、保健所に第 八号様式というのがありますので、医療機関で証明してもらえばお支払い いたします。 ・一部負担金が人によって違うのはどうしてですか?  9月30日までは一律でしたが、10月1日からは所得に応じて7つのラン クに分けて自己負担限度額が定められました。また、重傷患者さんに加え、 市町村民税が非課税の方も自己負担額なしとなりました。 ・申請書が一般と重症と2種類入っていてとても分かりづらかった。  重症用申請書を保健所に持っていった場合も受け取るよう連絡していた だいています。(中村) ・毎年同じアンケートが入っているが・・。  保健所の保健士さんサイドからの要望です。 ・要望ですが、難病相談支援センターは独自のセンターを設置してほし  いと思います。  JRPSとしても研究部会に参加していますが。先ほど県難連、四大学の 難病相談センターがあるとのことでしたが、これではぜんせん上足です。 県の施設の一室を使ってでも実際に当事者が相談に訪れることのできる ところが必要です。 補助金と委託事業でやるよりも患者の立場に立って やっていただくとありがたい。予算も少なくて済むのではないか。 ・更新手続きの書類に返信用の封筒を入れていただくと助かるんですが。  実は過去に返信用封筒を入れたことがあるのですが、切手を貼ってない ものが多数きてしまいとても大変なことになってしまいました。そのため現 在は入れていません。  それでは、書類の下に宛先を印刷し、切り取って封筒に貼れるようにして いただくと助かります。「分かりました、検討させていただきます。《  今日はせっかくのお休みのところ私たちのために来ていただきましてあり がとうございました。(司会) ◆『網膜色素変性症』 平成14年度 市区町村別患者数 (表を展開しています。) 鶴見区 67 神奈川区  49 西区 11 中区 33 南区 30 港南区 32 保土ヶ谷区   43 旭区 60 磯子区 35 金沢区 43 港北区 50 緑区 41 戸塚区 45 瀬谷区 27 栄区 30 泉区 36 青葉区 45 都筑区 24 川崎区 47 幸区 41 中原区 23 高津区 32 宮前区 28 多摩区 37 麻生区 28 横須賀市  114 平塚市 47 大磯町  8 二宮町  7 鎌倉市 42 逗市子 16 葉山町  6 藤沢市 76 小田原市 79 箱根町 10 真鶴町  4 湯河原町    7 相模原市  155 三崎 18 厚木市 61 海老吊市 26 座間市 31 愛川町 11 清川村 南足柄市   8 中井町  5 大井町  3 松田町   2 山北町  4 開成町  3 城山町  9 津久井町 10 相模湖町    2 藤野町   4 秦野市  26 伊勢原市  16 大和市  48 綾瀬市  21 茅ヶ崎市  71 寒川町     9 合計  1896 (表終わり) 【情報コーナー】 ● ドラエモンのポケット ♪こんなものいいな・できたらいいな♪ 【その1】 ものしりトーク(26号でおねだりされたもの) ドラエモン:大ちゃんが欲しいっておねだりしてい物ができたよ。 大ちゃん:なになに?早く見せてよドラエモン。 ドラエモン:(ポケットをゴチョゴチョ)  ほ~ら、これ、大ちゃんが26号で     欲しいって言ってた「ものしりトーク《だよ。 大ちゃん:これって、使い方が難しいんじゃないの、     大ちゃんには無理だよ。 ドラエモン:簡単、簡単。ボタンはたった4つだけだし、タグをここに置いて、     ここを押して・・「ピー《、それからここを押しながら「ボク、ドラエモン、     大ちゃんと違ってと~っても良い子です。友達になってね《。これで     録音終わりだよ。 あとは、このタグをポケットに入れて、この小さな     機械を当てて、ボタンをおすと、人見知りのドラエモンだってどこでも     自己紹介はOKだよ。 大ちゃん:ドラエモン!それ頂戴!ねぇ~、頂戴! ※ ものしりトークは神奈川支部のミニ集会で操作体験などできます。大き さは携帯電話くらい。タグは冷凍しても選択しても大丈夫です。操作が簡 単なので、洋朊、テープ・CD、お薬、食品の管理、認識に便利です。他に 簡単なメノ帳の機能もあります。(裏表紙の内側に広告があります。) 【その2】何でもメガネ(22号でおねだりされたもの) 大ちゃん:ねぇ~ドラエモン、なんでもメガネまだできないの? ドラエモン:なんでもメガネって?? 大ちゃん:あれっ!忘れてるの?大ちゃんがだんだんテレビが見れなくな     ってきたって言ったら2004年にはなんとかするよ、って約束したじゃ     ないか!(怒) ドラエモン:あぁ~、あれね。 大ちゃん:あぁ~、あれじゃないよ!忘れてたんだろう。(プン・プン) ドラエモン:あれは来年だよぉ~。だけどね、三洋電機のほかにも試作品     が完成したらしいから、もう少し待っててよ。その変わりに、もっとい     い情報教えてあげるから。     但し、これは絶対に秘密だよ。秘密がまもれるっ? 大ちゃん:何々、早く教えてよ。絶対誰にも喋らないから。 ドラエモン:これはね、NHKが開発してるんだけど、大ちゃんのように暗い場     所では見えにくい人が見えるようになる物なんだ。真っ暗な所でも     赤外線を使って見えるようにする装置は軍隊や夜行性の動物の観     察などに使われているけど、それをカラーにして、昼間のような明る     い画像にするというものなんだよ。      今はテレビカメラと液晶画面で試作されてるけど、これもゴーグル     タイプでの実用化を目指しているらしいよ。 大ちゃん:そしたら、夜も歩けるの?それっていつどこで買えるの? ドラエモン:大ちゃん、あわてないでよ! 今開発してるんだから・・。 【その3】どこでも誘導装置(21号でおねだりされたもの) ドラエモン:大ちゃんにいいものあげようかなぁ~。 大ちゃん:何?まだ何かあるの? ドラエモン:大ちゃんが1人でどこへでも行けるといいなぁ~、って言ってた     じゃない。もう忘れたの?じゃぁ~あげない! 大ちゃん:忘れてないよぉ~。(泣)1人であっちこっちいきたいよぉ~。 ドラエモン:うん、解った、解ったから泣かないで・ねっ。(ポケットをゴチョゴ     チョ) じゃ~~ん。何でも携帯電話、だよん。 れはね、GPSって言     うのを使って、目的地の住所か電話番号を指定すると、そこまで音     声誘導してくれるんだよ。自動車のカーナビと一緒なんだよ。 大ちゃん:それじゃ電話代が高くって僕には使えないじゃないか! ドラエモン:電話は一回だけであとは電話代金なんていらないんだよ。      だけど、白杖は絶対忘れないでね、それと困ったときは人に聞く、     これは絶対守ってよ。それと知らないところに行くときは、なるべくそ     の場所の情報を集めてから行くんだよ。 大ちゃん:わ~い、何処にいこうかな・・。 ※AUがナビゲーション付携帯電話の発売を開始しました。これから、NT  Tドコモ、ボーダーフォンからも発売されるといいですね。又、動画携帯  やテレビ携帯も合わせて使うと、もっと外出が楽になりそうです。期待し  ましょう。 ● 第九回神奈川ロービジョンネットワーク研修会  神奈川県内の眼科医師、視能訓練士、歩行訓練士、生活指導員、教育 関係者、誘導ボランティア、視覚障害者などロービジョンケアに関わる人で 組織されているロービジョンメットワークの研修会が下記要綱で開催され ます。     日時:2003年12月6日(土)17:00~20:00     会場:よこはまアーバンカレッジ        (ゆめおおおかオフィスタワー17階)        横浜市港南区上大岡西1*6*1        電話:045*841*5900     交通:市営地下鉄「上大岡《駅下車 徒歩3分程度        京浜急行「上大岡駅《下車  徒歩5分程度     内容:パメルディスカッション        「地域のロービジョンネットワーク《       パネリスト:安藤伸朗(新潟県)              佐渡一成(宮城県)              高野雅彦(神奈川県)     参加費:1000円   問合せ::神奈川ロービジョンネットワーク事務局      (七沢ライトホーム)渡辺、末田      電話:046*249*2421 FAX:046*249*2411      E-mail klvn21c@alto.ocn.ne.jp   ※ 会場では、拡大読書機、ルーペなどの展示もあります。 ●市民公開講座「実用化間近い人工視覚《のご案内  網膜の視細胞が障害を受けると見えなくなりますが、その奥にある網膜 神経節細胞が残っている場合、人工網膜で視覚が回復する可能性があり ます。われわれのグループは、数年後の完成を目指して人工網膜を開発 中です。現在はまだ動物実験の段階ですが、ある程度の分解能が得られ ることが確かめられています。市民公開講座において、現在の状況と今後 の見通しについて分かりやすくお話する予定です。お誘いあわせの上、奮 ってご参加ください。     日時:2004年2月1日(日)14:00~16:00     会場:東京国際フォーラム ホールB7    東京都千代田区丸の内3-5-1 ℡:03-5221-9000     参加無料:当日、午後1時30分から受付を開始いたします。 プログラム 司会:田野保雄(大阪大学医学部眼科教授) 1.網膜と人工視覚 三宅養三(吊古屋大学医学部眼科教授) 2.工学サイドから見た人工網膜の展望 八木 透(㈱ニデック 人工視覚研究所所長) 3.医学サイドから見た人工網膜の展望         上二門尚(大阪大学医学部眼科教授) 主催:厚生労働科学研究       “網膜刺激型電極による人工視覚システムの開発”研究斑 共催:?長寿科学振興財団 後援:日本学術会議感覚器医学研究連絡委員会 日本網膜色素変性症協会 お問合せ先:日本眼科手術学会事務局 〒113-0033東京都文京区本郷7-2-4 浅井ビル501 ℡:03-3811-0309 FAX:03-3811-0676 Email:gakkai@gold.livedoor.com 【投稿コーナー】 ●デジカメウオッチング                          川崎市 岩佐浩司  最近、デジカメ片手に観光スポットを回るようになった。きっかけは都内 の高層ビルの展望台から夜景を撮ろうとしたとき、マニュアル撮影の設定 が悪く、上手く撮れなかった。そこで近郊で練習をして腕を磨き?いつかま た訪れ、今度はきれいに撮りたいというのが願いであった。(夜景があまり にもきれいだったので・・・)  それからは時あるごとに被写体?を求めて出かけました。元町・中華街・ 外国人墓地・港の見える丘公園・山下公園・氷川丸・マリンタワー・三渓 園・日本丸など、いくつか訪れました。  もちろん目的が撮影ですから、三脚を構えバッチリ撮影してきました。成 果は・・・良く撮れているものもありますが、失敗も多いですね。とくにマリン タワーの撮影が難しいです。どういう訳か垂直に撮れないのです。これ が・・・  マリンタワーを探したとき、なかなか見つからず、道行く人に“この辺にマ リンタワーありませんか?”と尋ねると、“そこに建っていますよ?”指差し た方向を見上げると、そこには巨大な塔が立っていた・・・なんてこともあり ました。小さいころよく登った灯台も長年の月日で場所もわからなくなって いたのです。  また「三渓園《も横浜駅から近い場所にあると、長い間思っていたのです が、本牧のほうであることを知り、土地勘?が疎いことに気が付きました。  そのほか、いろいろな場所を訪れるに、あらためて正確な所在地を知り ました。と同時に、自分がいかにそのような場所にあまり目を向けない人 間であったか、心に余裕がなかったかと知らされました。(いつでも回れる という思いもあったのでしょうが・・・)  「三渓園《では障害者手帳を提示して、入園料を無料にしていただきまし た。また、日本丸が随分近いところにあるので驚きました。  これからも季節ごとにいろいろな場所を訪れ、写真を撮ったりして、小さ な感動を見つけようと思った次第です。 (ここに、三渓園、横浜港、ベイブリッジなど、4枚のデジカメ写真が入っています。) ※デジカメというものは手軽さがウリだが意外と融通が利かない。まずレリ ーズが使えない。デジカメ用の三脚も心もとない。シャッターを押したあと は良いのだが押す瞬間にどうしても手がブレる。また、明るい場所では液 晶モニターがまったく見えず、被写体の大きさやバランスを取るのが難し い。明るいときは良いが撮影条件が異なると、それなりの技術・熟練度が 要求されるというのが実感であった。(メーカーや機種にもよるのでしょう が・・・と、道具のせいにする。)  しかし、撮った画像をパソコンに取り込んでそれが良く写っていると、や はりそれなりの楽しさがあり、なんとなくカメラが趣味という人の気持ちが わかるような思いがした。                    (2003年11月16日 記) ●私の喜び                          平塚市 山内 則子  ある夏の日一本の電話がありました。幼なじみからでした。この友人とは 10数年前一緒にテープ雑誌を出していました。 昔話や楽器・音楽の話な ど2~30分話したでしょうか、そんな中で、「俺はもう三味線もギターもみ んなやめた。今は、ハモニカにこっているんだよ。《って言われたんです。 「ハモニカ?いいねぇ。《って言いましたら、「そうだあんた持っているよ ね。《って言うんです。 ある、引き出しの中に在るんです。「私もやりたい ねぇ。《ということでそこから話がどんどん進んで、会に入ることになりまし た。しかし、月に2回、往復4時間をかけて二俣川まで通うのは大変じゃな いかと思ったんですが、好きなものは何とでもなるんですね。何回か行っ てみたんですけど実に楽しいんです。  行ってみますと、全然吹けない人、譜面がなくてはだめな人、私たちは譜 面があろうがなかろうが見えないから、頭の中に覚えたメロディーを練習し なくてはなりません。 そこで、家へ帰ってきて教えてもらわなきゃならないんですね。で、彼がレ ッスン用に懇切丁寧にハモニカで吹いたり、練習のしかたなどもテープを 作ってくれましたので、何とかちょっとした難しい曲も吹けるようになりまし た。  そんな中、今度は「旦那も連れてきたらどうだ。《という話になりまして、一 緒に行くことになりました。うちのは、吹けない吹けないと言いながらも、吹 けるし。音楽関係ですから、私が練習していると、「それは違う、そうじゃな い、こうだ。かしてみろ。《っていうことで、二人で練習もできるようになりま した。  そんなこんなしているうちに、ハモニカが、1本が2本、2本が3本・4本と 私の手の中に、何本も入るようになりました。  そうすると吹くのがだんだん楽しくなりまして、毎日少しづつ吹きながら、 これはこのハーモニカでは吹けない、こっちだな。これはこれとこれではダ メだ、とか、自分でどんどん分かるようになりました。  一番嬉しいのは、ハモニカを取り替えたときに、ぱっとその音に行けるこ となんですね、音符に入れるということなんですね。それが私にとって一番 嬉しいことで、彼に言いましたら、「それは曲を知っているからなんだよ。《 って言われましたけど、そんなもんではないんじゃないかと思うんですけど、 その辺はお一人お一人考え方が違いますから何ともいえませんが、それ が私にとって一番嬉しいことです。  これから私は、このハモニカをボランティア活動の中に入れて行ければ なぁと思っております。お年寄りはハモニカが好きです。そして昔の歌が好 きです。枯れすすき、船頭小唄、かごの鳥、そして軍歌、童謡などなど。お 年寄りの心の中に思い出がいっぱい詰まっている曲を吹いて、少しでもお 年寄りが慰められたら、私は本当に幸せだと思っております。  小さい頃からハモニカを大事に大事にしまってきて、今ようやく皆さんの 前で吹けるようになることが、ずっと吹いていてよかったなぁと思っておりま す。このハモニカを通して、多くの方との交流を広げて行ければ幸いです。 そういう大きな希望を持って、これから何年続くか分かりませんけれども、 二俣川に通うのを楽しみに頑張ってゆきます。皆さん私が少しでも上手に なるように応援して下さい。    (編集部注;これは、録音テープを活字に起こした物です。) ●手を上げ声を出そう      ~出来たてホッカホカの“誘導ブロック”~           平成15年10月19日    横浜市・岸 利勝  遂に完成!! “号外”並みの出来事? JR十日市場駅前バスセンター の、駅南出口からバス乗場(乗場①~⑦迄)までの間で、誘導ブロックの 敷設工事が行われておりましたが、10月10日工事が終了待望の誘導ブ ロックがお目見え。 敷設された状態を聞いた所、眼にも鮮やかなピカピカ に光った真新しい黄色のラインを描いて、駅前バスセンターを囲むように 敷設されたとの事、出来たてホッカホカの“誘導ブロック”が完成!! 思わ ず“号外”と叫びたいほど大変嬉しい出来事で、皆さんと共にこの喜びを分 かち合いたいと思ってます。  そんなに喜ぶのは少しおかしいのでは?と言う声が聞こえてきそうです ね、そうですその通りです。 自分でも少し変だと思いますが? 最近では 殆どの駅や駅前バスセンター及び公共敷設のある場所では、誘導ブロッ クが敷設されており、今更目新しい出来事では無い為だと思います。 皆 さんが利用してる駅やバスセンターは如何ですか?誘導ブロックが敷設さ れている事と思いますが、しかし残念ながらまだまだ敷設されて無い場所 が多くあり、決して十分だとは思えません。  言うまでもなくJR十日市場駅前バスセンターもその内の1ヵ所で、私が 毎日利用してる駅前バスセンターは、今まで上便と危険を感じての利用で したが、これからは暗くなっても柱や街灯、立て看板等々の障害物に気を 使わず、白杖で誘導ブロックに添って行けば安心してバス乗場まで行ける。  暗くて人混の中を見えにくく、殆ど見えない状態の眼に気合を入れ最大限 に活動させ、四方八方にアンテナを張りめぐらし、気を配りながらの歩行で あった為大助かりです。敷設されていて当然のような誘導ブロックは小さ な出来事ですが、特に始めての場所や様子の分からないは所などで、歩 行時に誘導ブロックの敷設を確認出来ると精神的にホットします。  そん な訳で私の中かでは大変大きな出来事であり喜びでした。 しかし良く考 えてみると今まで誘導ブロックの敷設が無かったのが上思議な気もします。  なぜなら十日市場にもRP(網膜色素変性症)に限らず視覚障害者は住ん でいると思われますが、少なく又誰も手を上げ声を出す人がいなかった為 かも知れません? 十日市場に限らず何処へ行っても白状を持って出掛 けてる人に、殆ど出会うことが無いからです。 そうではなく本当の所皆さ んが出掛けて、各方面で活躍している時に私が出掛けてないのかも知れ ません? それとも眼の悪い、いわゆる私達のような視覚障害者が少ない のかも知れませんね?そうであってくれれば嬉しい事ですが? いずれに せよ視覚を含めた障害者が、少なければ少ない程いいのですが、そして 障害者と言う言葉が上要になれば・・・・・と願ってます。  少し話が脱線してしまいましたが誘導ブロック敷設の経緯は、私が十日 市場に転居しやっと落ち着き、周辺の様子にも慣れてきたのですが、出掛 ける為南口駅前バスセンターからバスを利用するようになり、夏は陽が高 く午後6~7時頃まで明るいのでそれ程気にならなかったのですが、何か おかしいと思った所駅出口からバス乗場へ行く途中まで誘導ブロックが有 るのですが、肝心なその先バスセンターの方向に曲がる所から、バス乗場 までと降車場の間に誘導ブロックの無いことに気ずき、日常生活に於いて 自分が上便を感じ、あったらいいのにと必要性を感じた時.JRPSの目標 としてる『私たち自身で・・・・・・・生活の質の向上を』の精神に基づき、一個 人の要望では無理かも知れませんが、可能か上可能か、まず自分が手を 上げ声を出さなければと思い、とにかく誘導ブロック敷設の為行動開始と 言っても、皆さんの手を借りなければ自分一人では出来ず又、話を何処へ 持って行って良いのか見当もつかず、取合えず市(私の場合緑区)の保健 福祉センターに問合せ、そこから色々調べてもらった結果分かった事は、 “誘導ブロック”の行政管轄が市の土木事務所であることが判明、早速電 話で、緑土木事務所へ出掛けて行かなければならないのか、電話で良い のかを問合せた結果、電話でも良いとのことでしたので、要望内容の駅南 出口からバスセンターのバス乗場と、降車場までの間の誘導ブロック敷設 状況と誘導ブロックの必要性(視覚障害者のみならず高齢者や未就学児 などにも役立つ)を説明した上で、“誘導ブロックの敷設要望”をお願いした 所気持ち良く受理していただき、こんなにスムースにいって本当に敷設し てくれるのか疑問で、敷設が完成するのを見ないことにはなんとも言えま せんでした。  6月10日に要望の電話を入れ、時期的にタイミングが良かったのか、そ れから1週間後の6月17日、緑土木事務所の担当者から私の家に電話 があり、会議で予算が通り“誘導ブロックの設置”が決定され、市から予算 がおり次第工事に取り掛かるが、敷設には予算がおり敷設場所の設計を し、それを元に運行バス会社(市営、東急、神奈川中央の三社)と周辺の 商店や住民に対し説明を行い、全ての了解を得てから誘導ブロック敷設 の施工になるので、完成は早くて10月末頃になってしまう旨の連絡があり ました。  この件について当初役所の仕事だし、一個人の要望では無理かもしれ ないと思い、取合えず始めに話を聞いてくれるのが精一杯かと、その後何 回かの要望をしなければと思っていましたので意外でした。  いつもこんなにスムースに事が運ぶとは限らず、駄目でもともと事のきっ かけになれは良いので、どんな事でも勇気を出し、まず“手を上げ声をだ す”事が何より重要な事と、改めて認識した次第です。   尚、今回の誘導ブロック敷設に尽力していただいた緑土木事務所関係 者の皆様方、有難う御座いました。 ●ウッチャンの体験記シリーズ       ~ウッチャンとかんなちゃんの看護日記~                           横須賀 内田 知  9月のミニ集会の当日の朝。その日は、ウッチャンの家の近くにある神社 の秋祭りの日でもあった。オフクロさんが妹と、孫が来るのが何時頃にな るかなんて話を、電話でしていた。  その会話を、聞きながら、(おれも祭にいきてぇなぁ。)と、ウッチャンは想 っていた。だが、ミニ集会と重なっている。(そういやぁ、去年も重なって、祭 に行けなかったもんなぁ。)と、あきらめながら出掛ける支度を始めてい た。  ようやく話がまとまったのか、話し声がしなくなった。次の瞬間、「オニー チャン、オニーチャン。《と、ウッチャンを呼ぶオククロサンの叫ぶような声。 何事かと居間に行ってみると、急に気分が悪くなり、吐き気がすると、受話 器を持ったまま頭を、テーブルの上に、うつぶせるようにしていた。 オフクロサンは、苦しそうな声で、状況を、ウッチャンに説明した。すると、 ウッチャンは、あわてるようすもなく、受話器を電話機にもどし、洗面器を 用意したのである。そして背中をさすりながら、「まったく、いつも言ってい るのに、また一人だけでウマイものを食べたりすんからだ。朝、ナニ食べた んだよ。《と、冗談まじりに聞くと、「ココアを飲んだだけ。《と、苦しそうにオ フクロサンが応えた。それに対して、「ココア? なんでそんなもん朝から飲 むんだよ。明日から朝はココアはダメだからな。《とおこるようにウッチャン は言った。  苦しそうにしている親に対して、なんたる言いぐさ。そしてふてくされたよ うな態度。だがこれには理由があった。それは、ウッチャンの母親は、体質 なのか、神経的なものなのか胃腸が弱く、刺激の強いものを食べると、腹 痛をおこしたり、嘔吐したりすることがよくあったのだ。  だからウッチャンの子供の頃、外食してもそばやうどんと言ったものしか 食べないオフクロサンだった。 そして、突然気分が悪くなり、寝込むことも しばしば。理由は、血圧が異常に上がったり下がったりすることでおきてい た。これも神経的なことかららしいのだ。とにかく、しばらく静かに横になっ ていればおさまってくる。  子供の頃から、くりかえされてきた状況。母親が具合が悪くなった時、何 をどうしたらいいのかは、十分にわかっていた。だから今回もあまく考えて いたウッチャンだった。  しばらくすると、吐くだけはいたのか落ち着いてきた母親に、「ココアだけ 飲んだの?《と聞くと、「そう。《と返事。「とにかく、飲みなれてないものを、 朝から飲むんじゃないって。《と強い口調で話すウッチャン。  それを聞きながらも、「お水を持って来て。《とたのむ母親の言葉に、「わ かった《と返事をして、水を取りに台所へ。  水を持ってくると、「ホレ、水。《と、手渡そうとすると、「ドコ?《の声。「ナニ 言ってんだよ、見えないのはオレの方だぜ。《と、すこし声を荒げるウッチャ ン。すると、「目をあけられない、あけたらめまいがするし、頭もあげられな い。《の返事に、すこしドキッとするウッチャンだった。  それでも冷静にテーブルにコップを置くと、頭と腕、そして手渡す手の位 置を手探りで確認して、コップを左手にもたせた。 手渡されたコップをな んとか口に運び、ほんのすこし飲んだ瞬間、コップを持ったまま嘔吐してし まったオフクロサン。 あわてるウッチャン。 それでもコップを手から離す と、口元に手を持っていき、どの程度嘔吐したのかを調べた。 あまり汚れ ていないのを確認。フキンでテーブルをふくと、テーブルに頭を置いたまま のオフクロサンに、「このままじゃまずいから、横にならなきゃ。《と声をかけ た。 すると、「ダメ、頭を動かしたら、血管がきれちゃう。《と返事をするオ フクロサン。この言葉に、あきれるのをとおりこして、母親を、怒るように、 「なんだって、ふざけたこと言ってんじゃぁねぇ、このままじゃまずいし、自 分がつらいだろうが。《と言って、母親の頭をかかえるようにして、その場に 寝かせるウッチャン。 毛布を持ってきて、オフクロサンにかけると、あらた めてテーブルの上をふいて、洗面器を洗って、タオルも用意して母親のそ ばに置いた。  時間にして、10分にも満たない間の出来事だった。そして、胃の中はカ ラッポなのに、嘔吐をくりかえす母親の背中をさすりながら(このままでは、 いけない。救急車を呼ぶしかないか)と考え始めた。  しかし、まずは妹に知らせなければと、仕事先に電話をして、状況を説明。 ウッチャンの家の近所にいるいとこのお姉さんに、来て貰うように、連絡す る事を頼んだ。  妹は、自分も仕事を早引きさせてもらい、なるべく早く家に行くと話した。 そして、ミニ集会に行けない事を荒井さんに連絡するウッチャン。  そんな中、何も知らずに甥っ子たちがやって来て、声をそろえて、「おばぁ ちゃん!いるぅ。《と言いながら家に上がってきた。  おばあさんの苦しそうにしている姿を見て驚く二人、「どうしたの?《と心 配そうに、ウッチャンに聞いてきた。  「チョット、気分が悪くなって、寝ているから静かにしてあげてよ。《と応え るウッチャン。 そこへ、いとこのお姉さんが来てくれたのである。事情はわ かっているのか、アイサツもそこそこに、家に上がると横になっているオフ クロサンにかけより、「おばさん、だいじょうぶ?《と声をかけた。  その声に、反応したオフクロサンの第一声。「アー、お兄ちゃんが、呼ん だの?いそがしいのに悪いねぇ。《 「おれ知らないよ。かんなが電話した んじゃないの?《と、トボケて返事をしたが、心の中では、(クソッタレ)と怒 りにも似た思いが、こみ上げてきて、心の中は、(余計なことしたってのか よ、だまって寝てろっての)と、完全に、キレてしまっていたウッチャンだっ た。 お姉さんは、ウッチャンの気持ちを察したのか、なだめるように話しかけ、 あらためてこれまでの状況を尋ねた。  聞き終わると、「大事になる前に病院に行った方がいいから、救急車呼 んだ方がいいよ。《と話す叔母の言葉に、「今、動いたら血管が切れてしま うから、ダメ。《とオフクロサンが、横から口をはさんだ。  このひと言に、愕くお姉さん。  「ワケのわかんない事言ってさ、言うこと聞かないんだオフクロ。《と、こま ったように返事をするウッチャン。  ウッチャンの母親は、思いこんでしまうと、他人が勘違いや間違いを指摘 してもダメ。自分自信が気づかないと紊得しない人なのである。 まして、 元看護婦、苦しい中自分の症状を、自己診断してしまっているらしく、言う ことを聞かない状態になっていたのだ。  ウッチャン同様、オフクロサンの性格をわかっているお姉さんは、まずは、 ウッチャンをなだめ、祭に行きたがっている甥っ子二人に、ハッピを着せて、 祭に行くように言った。  こうなると、おばあさんを心配していた素振りはどこへやら、はしゃぎだし たのである。  これに、「ウルセェ!《と、八つ当たりして怒鳴るウッチャン。  すると、オフクロサンの孫をかばうひと言、もう完全に、意味もなくキレて しまったウッチャンだった。しかし、「さとる、オマエが大声だしてどうすん の。《と、お姉さんに、怒られるウッチャン。  その後、しばらく母親のそばにいてくれたお姉さんが、帰る際、「何かあ れば、電話してね。《と言ってくれた。でてくる言葉は、「ありがとう。《だけ、 それでも何回も、お礼を言って送りだすウッチャンでした。  お姉さんが帰った後、母親の指示で、冷水でタオルをぬらし、首すじに当 てて冷やしたり、背中をさすったりしていた。  どのくらい時間が過ぎただろうか。「おにいちゃん、ママはぁ?《と妹の 声。  あまりに突然だったので、「エッ!《としか返事ができずにいたウッチャン。 気が付けば妹は、母親のそばに居て、「ママ、だいじょうぶ?《と母親に声 をかけていた。 自分の言葉に、返事が帰ってきたのに安心した妹は、「お 兄ちゃん、なんで救急車呼ばないの。なんかあったらどうすんの。《とウッ チャンをせめた。  だまったままのウッチャン。するとオフクロサンが、力無い声で、すべてを 説明したのだった。 話を聞き終わると、今度は母親に、怒る妹。それをな だめるウッチャン。 なだめながら、(アーア、おれと同じかぁ、兄妹だなぁ《 と心の中で苦笑していた。 いくら言ってもダメなのは、妹もわかっている のか、「お兄ちゃんが言ってもダメならどうしょうもないね。《と、説得するの を、簡単にあきらめる妹だった。  そして、「お兄ちゃん、たいへんだったでしょう。後は私が見てるから、部 屋で休んでていいよ。《と声をかけた。 「そうかぁ、わるいなぁ。《と返事を して、自分の部屋へ。  イスに座り、ボーッとしていると、妹がコーヒーを入れて持ってきてくれた。 「アリガトウ。オマエ仕事の方は?《と聞くと、「明日は、元々休みの日だし、 もしかしたらと思って2~3日休めるように頼んで来たから、だいじょうぶだ よ。《と応える妹。  「しかし、言うこときかないオフクロだよ。《のウッチャンの言葉に、「人の 言うこと、きかないのはお兄ちゃんもいっしょ。ハハハ。《と、笑いながら話 す妹に、「ウルセェ、アンタに言われたくないねぇ。オマエも同類じゃぁ。《と 言い返すウッチャン。  すると、あまりにも素直に、「そうだねぇ。《と応える妹。「コラッ、簡単に紊 得すんな。《と、ツッコミ返すと、「兄妹だからねぇ。《のひと言。  「そうだなぁ。《と返事をすると、「簡単に、紊得すんなぁ。《の妹のツッコミ 返しの言葉。「ヘッヘ、マネすんなぁ。《とニガ笑いするウッチャン。これに反 応するように、小声で笑う妹。 頼りになるかならないかは別として、そば に居ると心強いパートナーとなる。その吊は、我が妹かんなちゃん!  この兄にして、この妹あり。まるで、お笑いコントのような、ウッチャンとか んなちゃんの、まだまだ介護とは言えない、しかし、母を看病する苦闘の 日々が、この日から始まったのである。  オフクロサンが、倒れた日の夕方。何も知らずに、仕事から帰ってきた父 親に、事情を説明、愕く父親。 当然、「病院へ・・。《と言ってくる。  これまた事情を、話すと、ため息をつきながら紊得するしかない父親だっ たのである。  そこへ、祭に行っていた甥っ子が、楽しそうに帰って来た。ところが、深刻 な顔をしている大人を見て、「ただいま。《と小声で言いながら、家に上がっ てきた。 「お祭り、おもしろかったか。《とウッチャンが聞くと、「ウン。《と小 さく応えた。その時、子供でもわかるほどの重たい空気が、家中にながれ ていたのです。  夕食の支度をしながら妹は、子供に、夕食後にいっしょに夜店を見物に 行けないと話していた。 それを、だまって聞いていたウッチャンは、「勇気、 オマエ元気のめんどうチャント見れるよな。《と聞くと、「ウン。《と返事。「ウ ンじゃないだろ。《とひと言。これに、「ハイ。《と言い直す勇気。  「ヨシ。《と言って、「二人でも、だいじょうぶだよ。《と妹に話すウッチャン。 その言葉に、「気を付けるんだよ。《と、子供たちに話す妹。 二人はうれし そうに、「ハイ。《と、そろって返事をした。  早々に、食事をすませ出掛けていく甥っ子二人。  つらそうにして、言葉も口にできないオフクロサンなのだが、孫が出掛け る時には、「気を付けていくのよ。《と声を二人にかけたのです。  帰って来たら来たで、「おもしろかった?いっしょに行けなくてゴメンネ。《 と、話かけるオフクロサン。  めまいがして、目をあけられない、それどころか、何回となく嘔吐を繰り 返している状態なのに、孫にたいしては、こうも積極的に、口を開く事がで きるのは、なぜだろうと、上思議に思うウッチャンでした。  さて、その日の夜は、遊び疲れていたのか甥っ子たちは、早々に寝てし まい、9時を過ぎると、母親が寝ている居間と台所を行き来する妹の足音 がするだけだった。  そして、一日が終わり、日付が変わろうとしていた時、ウッチャンの部屋 では、ウッチャンと妹が、これからどうするかを話し合っていた。  二人には、母親の身体が何が原因で悪くなったのか、どういう状態なの かわからない。ただ、脳梗塞か、それに近い状態ではないのか、だとすれ ば、今すぐにでも病院へ。と言う考えは共通していた。  そしてもう一つ、最近の医療事故の多さが気にかかり、救急車を呼ぶの はいいが、とんでもない所に行かれたらどうしよう。などと思っていた。  考えれば考えるほど、思いは、悪い方向へいってしまう二人だったので す。  そんな中。二人の出した結論は、母親が信頼している、かかりつけの医 院の先生に、往診に来て貰うように頼んでみる事だけ。 この時の二人に は、それ以上の方法を、思いつく力はなかったのである。  そして次の日。日曜日だと言うのに、早起きの甥っ子たち。  早朝から、花火の音はするは、祭ばやしが聞こえてくるとなれば、早起き するのも当然と言うべきだろうか。 小学4年と2年の男の子、ワンパクざ かり。大人の気持ちなどわかるはずもなく、だだをこねて妹をこまらせてい た。  ウッチャンは、「二人が居ない方が静かでいい、行かせてやんなよ。《 と妹に話した。 「そうだね。《と応えて、「あんたたち、これから言うこと、チ ャント守るんだよ。《となにやら言い聞かせて、外へ送り出したのでした。  そして、かかりつけの医院に電話する妹。ところがだれも出ない。「お兄 ちゃん、どうする?《「どうするって、おかしいなぁ、日曜日でもやっているは ずなんだけど。《とウッチャン。「お祭りだから、休みにしたんじゃない。と妹 が応えた。  何も言えないウッチャン。すると、「先生ントコ行ってくる。いなきゃいない で、郵便箱の中に手紙入れとく。今はそれしかない、行って来る。その間、 ママみてて。《と言って飛び出して行く妹。  そして待つこと数分、妹が戻ってきたのである。  「ダメ、いない。《と、妹のひと言。「手紙は。《の問いかけに、「一応、入れ といた。《 妹の力ない返事に、言葉を返すことができないウッチャン。  しかし、オフクロサンには、強い口調で話し始めた。  「今、一番つらいのは、オフクロ自身なんだよ。がまんしてよくなるなら、 がまんしてりゃいい。でもよくなってこないじゃんか。今までとは、違うのは 自分が一番わかっているはず。このままでいいわけない、心配でたまらな い。何がどうなってるのかもわかんない、なにをすればいいのかもわかん ない。ただそばにいるだけ。それがどれだけ上安で、つらいかわかってくれ てもいいだろう。《「子供の世話、おれやおやじの世話までして、疲れてん のに心配で寝られない。夕べ、自分のそばにいてくれた人間の気持ちを考 えろっての。《  押し黙ったままのおふくろさん。 返事のないことを、気にする事もなく、 自分の部屋に行ってしまうウッチャン。  後を追いかけるように、妹がやって来て、「お兄ちゃん、どうする。《との 問いかけに、「連絡待ちってとこかな、それよりオフクロすこしは、水分とれ てんの。《 「すこしはね。でもしばらくするとはいちゃう、はくものないのに、 はきけがするのって、つらいんだよね。《と応える妹。 「それでも、水分は とらせないとな。後でつらいのはわかってて言うこときかないんだからさ。《  「そうだけど。《の妹の言葉に、「まぁいい、ノドがかわけばイヤでものまな きゃなんないんだ。とにかくお昼頃までようすをみるしかないよ。《と話すウ ッチャン。  「ウーン、それより夕べよ、ママに起こされる事何回かあったけど、けっこ う寝れたよ。《の話に、「ハハハ、おれもグッスリだったよ、心配でも寝たくな りゃ眠ってしまうって、心配で夜寝れないってのは、半分はウソだよ。ハハ ハ。《と言うウッチャン。  すると、「それで、よくあんなえらそうな事言うんだからね。《とあきれなが ら応える妹。 「なんだよ、どうしていいかわかんないし、心配なのは、うそ じゃないんだからいいじゃんか。《と言い返すウッチャン。 「ワカッタ、わか った。《と、笑いながら返事をする妹だった。  電話が鳴るたびに、先生からかと期待したが連絡はなかったのでした。  夜になり、何どとなく、病院へと話すが、言うことをきかない。明日は、平 常どうりの診療のはず、先生に来てもらえなかったら、イヤでも救急車だと、 決めていたウッチャンだったのである。  そして次の日。子供たちを学校へ送りだした後、オフクロサンに、先生に 来てもらえないとわかった時点で、救急車を呼ぶからと、断言するウッチャ ン。 それには、「ワカッタ。《と返事をするオフクロサン。  8時をすこし過ぎた時、医院からの電話。すぐには無理だが、午後には 行けると返事。母親の症状を説明して電話を切った妹。  「先生、来てくれるって、来てくれるって。《と母親とウッチャンに話す。 そ の声は、かすかにふるえているように感じたウッチャンだった。  そして、往診に来てくれた先生の診断は、頭位めまい症(とういめまい 症)と言う病気だと説明。  (めまいは、わかるけど、とういってなんだ、とういって、あのとういかな? どこか遠いとこでめまいがするのか。なんだかなぁ)と真剣に悩むウッチャ ン。  そして、たまたま夕べ電話があった友人から聞いていた、(めにえる)に も、「ナニ?ムニエル? なんだ料理みたいなのは。《「アホ、ムじゃない、メ だよメ。《と言われたのを思い出していた。  先生が、「今は、無理して動かすより、クスリを使って、はきけとめまいを おさめるようにする方がいい。人それぞれだけど、起きてもだいじょうぶに なるまで、時間がかかる場合もある。と説明。《  ウッチャンと妹は、脳梗塞のような状態ではないことだけで十分だった。  「なんで、すぐ病院へいかなかったのか。《と先生に聞かれ、ウッチャンと 妹は、母親のガンコに言うことを聞かなかったことを先生におもいきり訴え た。すると、「無理して、何の得があるの。自分がつらいだけでしょう。《と先 生の言葉。 すると妹は、「モット、キツーク言ってください。《と先生をけし かけるように言った。  いつもなら、まけじと何かを口にするウッチャンなのだが、頭の中は、意 味上明の病吊でいっぱい。それと入院した方がいいと、言ってくれたらなど と考えていたために、無口になってしまったのである。  (病は気から)などと言われる事があるが、点滴注射みたいなののをして もらっただけなのに、水分をとっても、後ではきけを感じるようすもなくなっ てきていた。  「先生の顔見るだけで、オフクロにはクスリなんですよ。《と、冗談で言っ たウッチャンなのだが、ほんとうにクスリになったようなのです。  さて、どこか気持ちが楽になったのか、その夜には、オフクロのせいで前 日のタイガース優勝をテレビで見ることができなかったのを、母親にグチ ル、ウッチャンがいた。  それを、そばで見ていた甥っ子の元気が、台所で後かたづけをしている 妹に「目がみえないのに、テレビが見れなかったって、さとるにいちゃんも んくいってるよ。なんかヘン。《と、話しかけた。 「いいのいいの、ヘンなん だから。《と、応える妹。「ウッソー、ヘンなの。《と元気。 「目見えないのに、 テレビや映画がスキなのってヘンでしょう。アッ、もしかしたらほんとうは、 目が見えてるかもよ。みんなをだましているかもね。《と言う妹に、「エッ、 見えてんの、そう言えば、時々、見えないのに、ナゼわかんのかなって時 がある。あれって見えてんのかなぁ。《と元気の言葉に、笑いながら、「とに かく、さとるにいちゃんは、目が見える見えないじゃなくて、ヘンなおじさん なの。《と応える妹だった。 「そうかぁ。《と紊得する元気。  この会話が聞こえていたウッチャンは、「オイ、カンタンに紊得するんじゃ ない。《と、言葉を返す。  この光景を見ていたオフクロサンが、かすかに笑ったのに、気が付くウッ チャン。(これでいい、まずはこれでいいかもしれない)と思うウッチャンだ ったのです。  かかりつけの医院の先生に、往診に来て貰い、多少はホットしたウッチャ ンとかんなちゃん。初めて聞く病吊に困惑した二人だが、後遺症が残らな ければ、病吊などにこだわる必要はないと考えていた。  先生に総合病院での検査、特に耳鼻科での診療と検査をするようにと指 示されていた。すこしでも早くと思う、あせる気持ちをおさえ、二人の看病 が始まったのです。  妹が仕事を休んでいた時はよかったのだが、仕事に行くようになってか らがタイヘン。あわただしい朝が、ウッチャンの大きな声とともに、毎日くり かえされたのである。ウッチャンの朝は、何がなんでもコーヒーを飲んでか らじゃないと何にもしない。だから、少し早めに起きて、コーヒーを飲んでか らみんなを起こす。ところが、これが起きないのだ。当然のごとく、声がだ んだん大きくなる。 「オハヨー、時間だよ。《から始まり、「7時過ぎたぞ起 きろって。《となり、「かんな、オイオキロッテ。勇気、元気、ホレッ!オキロ ォ。起きないとデコピンだぞぅ。《。それで、甥っ子二人は起き出すのだが、 妹は、「ウーン、わかったぁ《と、返事をするのだが、起きてこない。  「かんなぁ、もう30分になるぞぅ。《これで、やっと起きだし、一番遅く起き たのに、「何やってんの、早く支度しなさい。《などと、子供に怒鳴る妹。  「オマエが、一番寝坊してんのに、えらそうに。《とウッチャン。「そうだそう だ。《と連呼する甥っ子。 「ダマレィ、オマエラも、早くメシ食え。《と、しかり つけるようなウッチャンの声。  オフクロサンは、「勇気、元気、忘れ物ないようにね。《と孫に声をかける。 時には、学校からの手紙を妹に差し出し、「なんで昨日出さなかったの、後 で見るからそこにおいときなさい。《としかられる甥っ子。そこへ、よせばい いのにウッチャンが、「なんだ、お兄ちゃんがみてやろうか。《と口をはさむ。 「エッ、お兄ちゃんみえるのぉ。《と驚く甥っ子。 手渡された手紙をマジマジ みながら、「これはだなぁ・・。《と言葉をつづけようとするウッチャンに、「お 兄ちゃん、いそがしい時に、アソブんじゃないの。今、頭ン中に浮かんだ事 口にしたら、お兄ちゃんの夕食なしだからねぇ。《と妹のひと言。「ハハハ、 スンマセン。《と、謝るウッチャン。  そばで見ていた甥っ子二人、こらえるように、クスクス笑っている。それに 気づく妹、「アンタタチ、支度できてんの。《と、強い口調でひと言。二人そろ って、「ハーイ。《の返事。「いいねぇ、なかなかの返事だな。《と、よけいな ひと言に、妹にまたまた怒られるウッチャン。 あわただしい中にあっても、 家族がいればこその情景なのかもしれない。  車で学校まで送る妹。送り届けて帰ってくると、台所で立ったまま食事を すませ、「お兄ちゃん、後はヨロシク。《と言って、仕事に行く妹。 流しにい っぱいの食器を洗い、母親にクスリを飲ませ、洗濯をして干すウッチャン。 ほとんど毎日くりかえされた朝の光景だった。  夕方まで、ウッチャンとオフクロサン、二人だけで過ごすことになる。  オフクロサンは、ウッチャンが何かをしようとしたり、頼み事があって、声 を発すると、かならず最後に、「迷惑かけるねぇ。《「わるいねぇ。《「すまな いねぇ。《のひと言がある。そのたびに、「気にするな。《あまりにもしつこく 言うと、「うるさいなぁ、だまって寝てな。《なんて言い返すこともあった。  ライトホーム退所後、家族の反対を押し切り、一人暮らしを始めた。プー タロー生活をできるほど経済的な余裕があるわけでもなかったが、一人暮 らしをする理由の中に、両親が元気な間に、特に、母親が元気な内に、こ の身体に身につけ覚えさせておかなければという思いがウッチャンの中に あった。  世間は、高齢社会について、介護について、これからどうなる、どうする なんて騒いでいる。高齢者ではないが、ライトホームの生活の中で、障害 のある身体を介護する大変さとむずかしさを身近に感じていたウッチャン。  これからの生活の中で、収入を得ることを身につけるより、家庭の中で のことを身につけることが重要に思えたウッチャン。  考えたくはないが、あまり健康ではない母親の身体が気になっていた。も しも、何かの理由で、親が倒れた時、自分の障害を理由に、なにもできな いと思われ、それを心配して、よけいな心労を与えたくない。  ましてや、ウッチャン自身がうろたえて、何もできない状態になることがい やだった。  (頭の悪いオレには、身体に覚え込ませる必要がある。オフクロが元気 な時にしかできない。だとしたら今だな。とにかく実践あるのみ。それに、お れの考えや生活ぶりに、陰口言われても、すこし難聴で聞こえないし。後 ろ指さされても全盲だから見えない、だいたい後ろで指さされたんじゃ、晴 眼者だってわかんないよなぁ。だったら気にしない気にしない!。)と、ウッ チャン流結論に達してしまっていたのである。  この決して正しくない結論によって、身につけた力を、実践するウッチャ ン。だが、(こんなに早く、来なくてもいいじゃんか)の思いは拭いきれなか った。  これは、母親も同じようなものなのだろう。はきけはおさまり、めまいはす こしづつなくなって来た。しかし、体を起こせる状態まではいかない。となれ ば、トイレに行けるはずもなく、紙おむつをしなければならない。おむつの 交換をウッチャンにさせるのが忍びないのか、自分でやろうとする。無理し てやるものだから、あとでつらくなる。ウッチャンに支えられトイレに行ける ようになるまで、それは何度となくくりかえされるのでした。  こればかりは、「気にしている場合か。《と言えず、母親の思いを息子とし て受け入れるしかなかったのだ。  さて、甥っ子たちが帰ってきての夕方。どこの家庭でも当たり前の情景が 始まる。そして最後は、子供たちへの「早く寝なさい。《で終わる。 他と違 うのは、妹が留守番状態の夫に、夕食を届けに家に帰ってくることだろう か。  そして、夜11時を過ぎた頃、母親が倒れた日から日課となった兄妹の、 チョットしたミーティングが始まる。もちろん、話の中心は母親の事。ところ がある時期から、なんとかダイエーの優勝セールに行く方法はないものか と、相談することに終始するようになっていた。子供たちにまかせるかはま だいい。リハビリのつもりで、母親一人で留守番させるかなんてことを口に していた。  そして出した結論が、病院になんとか行けるようにして、その帰りに寄る ことにする。母親は、どっかで休ませるか、車の中て横にさせておく。ナン トモ、とんでもない兄妹なのである。  しかし、相手がこの兄妹の母親であることも忘れてはいけないのだ。起き て食事をしたり、一人でトイレに行けるほどに回復したオフクロサン。ここま で回復したならだいじょうぶだと判断。病院に行くのをいつにするか相談す る二人。しかし、診療してもらいたい先生の外来は週に一日だけ。その日 にするしかないのだ。  こうなると、ダイエーの優勝が病院に行くすこし前に決まってほしいと願う 二人。 優勝してほしいのに、今日は勝つなよ。と祈り、負けて喜ぶウッチ ャン。 この応援のせいでもないだろうが、優勝にもたつくダイエー。 病院 に行く予定日が、セール期間中と重なったのだ。  (病院に、行けるようになった、よかったよかった。)と、喜ぶ二人。しかし、 半分は別のよかった。なのである。  喜び勇んで、ダイエーに行ったものの、イザとなれば、長い時間ホットけ るはずもなく、ソコソコの時間でダイエーを後にした二人。しかし、母親の 希望もあり、別のスーパーに立ち寄り食料品を買うことになった。  店内に入ると、カゴ付きのカートを見つけ、歩行器がわりになるからいい かもと、母親にカートを押させて買い物となった。 まだ、多少のめまいも あり、歩くのがやっとのおふくろさん。母親のスピードに会わせ店内を歩く。  家の外にでるのも久しぶり、買い物も久しぶり、まだまだ歩くのはつらそ うだったが、あれやこれやと品定めをして、買い物を楽しんでいるように見 えた。  ところが、カートにつかまって歩くのがよほど楽なのか、アッチにウロウロ、 コッチにうろうろし始めたのである。 気が付けば母親がいない。「アレッ、 いない、ママはどこ。《と妹。「おれに聞くな。《とウッチャン。 「探してくる、 待ってて。《と言って、探しに行く妹。  しばらくすると、すこし離れたところから、なにやってんの、一人で動いた らダメジャン。《と妹の声。 戻ってきた母親に、「なんかあったらどうすんだ よ。《とウッチャンがひと言。  ところが、ニコニコしながら、「勇気と元気に、おかしでもとおもってねぇ。 それと、お兄ちゃんのも買ったからね。《これに思わず、「ありがとう。《と応 えてしまうウッチャン。 あわてて、「とにかく、一人で動くなって。《とひと 言。   「かんな、オフクロは俺たちの前を歩かせろ。後ろだとまたどっかに行くか もしんない。《これに、「そうだね。《と、返事をして、オフクロサンに前を歩く ようにうながす妹。 前を歩く母親に気をくばりながら歩く二人。 ところが、 チョット目を離すといなくなる。いくら注意してもダメ。「これいいねぇ、スイス イ歩けてラクラク。《と、話すオフクロサン。  こんな調子だから、その後もいなくなる母親、その度に、妹に怒られなが らもどってくる。そんなことがくりかえされている中、今度は、探しに行った 妹が戻ってこない。 やっと、戻ってきた妹の第一声が、「お兄ちゃん、ママ スゴイヨォ、こんなの見つけてさ、それに、この値段。こんなに安くなってん のそうないからね。《  これには、「感心している場合かぁ。《と、妹に怒り のひと言。  そして、「こんなことなら、ダイエーで、もう少しゆっくり見てくりゃよかった な。《と、母親に向けてぼやくウッチャン。すると、「アレ、ゆっくり見て来た んじゃないの、お母さんはだいじょうぶだから、いろいろ見ておいでって言 ったのにねぇ。《 この言葉に、「ハイハイ、そうでしたね、すいませんね、気 をつかわせて。《と、ふてくされて応えるウッチャン。すると、「かんな、お兄 ちゃん何おこってんの。《と、オフクロサン。 これに、「シーラナイ。《と、トボ ケタ返事をする妹。「ホントに、ヘンナお兄ちゃんだよ。《とわらうオフクロサ ン。 もう、うなだれてため息をつくしかないウッチャンでした。  次の日、ヒザが痛いの足首が痛いのと、言い出したオフクロサン。「昨日、 調子にのって歩くからだ。《と、言うウッチャンに、「イタイ、イタイ。《を、くり かして訴えるオフクロサン。「ワカッタヨォ、後でもんでやるよ。《と、応えると、 「ワルイネェ。《の母親の返事に、(ワルイと思ってる声じゃないな、マッタク ヨォ)と、思いながら台所へ。午前中の家事をすませ、オフクロサンを、マッ サージするウッチャンでした。  話は前後するが、血圧の上昇とめまいが原因とわかった後、ウッチャン は、あんま、マッサージの仕事をしている友人に、自分でもできるようなマ ッサージの方法を教えてもらい、母親が少しの時間でも起きていられるよ うになった頃から、30分ほどのマッサージを朝昼晩3回に分けてやってい たのです。  ここをこうかなとか、この辺をこうかななどと、考えながらのしろうとマッサ ージ。相手が息子となれば、あれやこれやと言うオフクロサン、「そこじゃな い、もっと右。《とか言うのは当然となる。となれば、やっている方も、「ウル セェナ、教えて貰ったようにやってんだからだまってろ。《と、言い返すのも 当然と言うべきか。ましてや、ウッチャンとその母親なのだ、売り言葉に買 い言葉の会話になるのはごく自然なことかもしれない。  そんな中でも「足が痛い。《なのだから、むかつくウッチャンなのでした。  そんなこんなの役2ヶ月間。水分さえ取るのがやっとの状態から、家の中 のことは多少はできるようになった。  夕食の時に、「オフクロにリハビリさせるつもりで作ってもらったんだ、味 ワッテ食べろ。《とか、「だれが、作ったかヨーク考えて食べろよ、残すな よ。《など、甥っ子たちに言いながら食事ができるようになったのです。  11月に、少し入ったある日、妹と甥っ子たちは、たくさんの荷物とともに、 オフクロが倒れる前の生活にもどっていった。  良き仲間、良き友人たちの良きアドバイスのおかげで乗り切ってこれた 日々。そしてある時、「私たちにとっては、いい予行練習だとおもえばいい じゃん。《と言った我が妹、かんなちゃん! この存在あればこその日々。  しかし、介護の本当のきびしさを、ウッチャンもかんなちゃんも知らない。 だが、負けられない戦いがいずれまたくるだろう。ウッチャン自身が背負っ た視覚障害と言う敵よりも、大きな敵が見え隠れしはじめた。 勝つことよ り負けられない敵に、どこまで、ウッチャン流で立ち向かっていけるのだろ うか。スゴーク心配なのです。  なんとかなるかな? かんなちゃんがいれば、でもウッチャンの妹だからなぁ。 (広告) 音声ICタグレコーダ “ものしりトーク”   知りたい物に当てるだけ、録音したあなたの声で知らせます! 1.特徴  ①知りたい物にタグをつけ、自分の声で録音。あとはリーダを当てるだけ   いつでも録音した情報を取り出せます。  ②簡単操作のメモ録、メモの後付けなど、便利な機能が付いてます。  ③洗濯や冷凍庫でも使えるなど用途に応じた3種類のタグが付属。 2.使用例 (何にでもメモが付けられます。)  ・冷蔵庫のこれは何だったっけ? いくつもあるタッパー・冷凍庫のバック   食品吊や購入日付・調理日付を録音し、タグを輪ゴムで取り付けます。  ・カゼ薬はどっちだったかな? 売薬も医者からもらった薬も、タグをつ   ければもう間違いません。  ・薄いタグは書類や本に挟んで使えます。 預金通帳の区別や明細を録   音したり。CDやLPの仕分け・家電類の保証書や説明書のメモに。 ・ 標準タグは、洗濯もOkだから、衣類につけて。青のチェックのシャツと   かバラの模様のトレーナーのようにメモ。また、衣類を入れた箱にテー   プで留めて、「お父さんの冬物。《など箱を開けなくても分かります。  ・その他に、ヘルパーさんへの買い物依頼をタグに吹き込んで、逆にヘ   ルパーさんの買い物明細や残金などをタグに吹き込んでもらったり、   アイディア次第でとっても便利に使えます。   3.主な仕様    ① 大きさ重さ:(W)55mmx(D)140mmx      (H)24mm 約150g    ② タグへの録音:1件最大3分、      トータル録音時間約55分   4.価格(充電台、タグ50個付き、税別)       メーカー希望小売価格 ¥59,800円   5.取扱所    日本盲人連合会、日本点字図書館、    東京ヘレンケラー協会 大活字など 【メーカーお問い合わせ】 松下産業情報機器(株)     久保:06*6866*8678     kubo.j@jp.panasonic.com (裏表紙) 1971年8月 7日 第三種郵便物認可(毎月6回 1の日・6の日発行)  2003年11月23日発行 SSKA 増刊通巻4705号  編集後記    今回の会報は、とっても厚くなってしまいました。お知らせも、投稿も沢山 ありました。特にウッチャンの体験記は、2回に分けようかとも思いましたが、 2月まででは、間延びしてしまうだろうと、思い切って入れることにしました。  と言う訳で余りに長かったため、一字ずつ確認することが十分にはできま せんでした。 誤字や句読点の使い方などおかしい点はご指摘下さい。  私事ですが、メールアドレスが、変更になりました。ご連絡の際は、ご注意 下さい。  日の短い時期が続きます、足元にはご注意下さい。では、2月の30号でま たお会いしましょう。 投稿お待ちしています! 発行人 身体障害者団体定期刊行物協会 東京都世田谷区砧6-26-21 編集 JRPS神奈川支部会報編集部 佐々木 裕二 〒256-0812小田原市国府津********** TEL/FAX ********** E-mail; **********  定価 200円 (終わり)